「青春図會」

河野鷹思初期作品集

●造本データ
AB判変形・上製・360貢
作品・参考図版 = カラー218点、モノクロ145点
監修・文=川畑直道
ブックデザイン=太田徹也
限定=1,000部(在庫稀少)
発行=河野鷹思デザイン資料室


河野鷹思さんのポスターを町で見て、憧れたものだった。
ポスターは俳優座の<町人貴族>や<ピクニック>などのもの。ぼくは多摩美の学生。駅ばりを盗んだこともある。当時たいていのグラフィック・デザイナーはイラストレーターを兼ねていたが、その比重の大小はあり、ぼくはイラストレーティブな要素の多い人たちの影響を受けた。当然河野さんの影響も。その頃、『河野鷹思のデザイン』が刊行され、すぐに手に入れた。デザイナーの個人作品集はまだ珍しかった時代だ。その時点での近作が多く収められていたが、モノクロのページに小さく、1930年の映画ポスター<淑女と髯>があった。
映画好きでデザイナー志望の学生であるぼくは、これに大きなショック受けた。ぼくが生まれる六年も前に、こんなにモダンな映画ポスターがあったのだから。これをカラーで見たかったし、河野さんによる当時のほかの映画ポスターも見たかった。しかしなかなか果たせないでいた。今回、河野さんの初期作品を集めた作品集が刊行され、その中で松竹キネマ時代の作品が多数見られることになった。作品集のテスト刷りを見る機会を得て、初めて見るその時代の作品群に、ぼくは学生時代と同じように圧倒されたのだった。
時はアール・デコの時代。世界的な流行ではあったにしても、日本ではたいそう新鮮だったに違いない。しかも映画ポスターである。主演スタアを美しく、またカッコよく見せるのが当然の媒体の中で、きわめて前衛的、大胆かつお洒落な仕事であった。これが新人の社員デザイナーによるものなのだから、ますます驚きである。当時新しかったというだけではない。その後映画産業がますます盛んになり、やがて斜陽を迎える歴史において、映画ポスターのほとんどは、きわめて保守的な、十年一日の如きデザインを繰り返している。その中で河野さんの映画ポスターは燦然と異彩を放ち、今なお新鮮なのである。
当時の松竹の上層部に若き河野さんの仕事を認める人たちがいたことは想像できる。映画にとって、良き時代の、よき職場だったのだろう。それにも増して、河野さんの新しいデザインで時代を変えようとする情熱が、いつまでも驚きを呼ぶ作品を生む原動力となったのだと思う。
- 和田誠 -
販売価格 19,440円(本体18,000円、税1,440円)
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